第70話 宴のあと


新たな女神が決まり、お祝いムードの広がる天界ではささやかな宴会が催されていた。
朱華達一行も、その宴に参加している。

「まさか、マゼンタさんが女神になるなんて思いませんでした。あんなに嫌がってたのに」

そう言う朱華に、マゼンタも苦笑する。

「まぁね……あたし自身が一番驚いてるわよ。でもまぁ色々あって、あたしなりに思う事があったってワケ。
だから、受ける事にしたの。ここで断るのも何だか悪いしね」
「それで、女神の存在はどうなるんです?」
「あたしの意見は、先代やその前の代と違わないからね……今の様な女神制度は廃止するわ。
もしあたしが本当に女神になる日が来た時は、そうしようってずっと思ってたから」

その意思を持ち続けている事こそ、女神としての器だったのかも知れない。
何となくだが、そう思う。
しかしこうして女神となった以上、彼女はこの天界で皆をまとめていかなければならない。
そう考えがいきつくと、不意に寂しさが襲って来た。

「そうですか……これでもう、お別れになっちゃうんですね。少し、寂しいけど……。
うるさいと思った事だってありましたけど、でも……幸せな時間でしたよ」

正直な、思いを口にする。
マゼンタは笑って、朱華の背を叩いた。

「当たり前でしょ! 何てったって、女神となった天使の契約者だったんだから、幸せで当然よ!!
……あ、そうだ、言ってたわよね。あたしが女神になったら願いを叶えてあげる、って。
何が良い? 普通なら不可能な事だって、何でも叶えてあげちゃうわよ?」

豪快に尋ねられた問い。
朱華は少し迷う様な素振りを見せたあと、ハッキリとした声で言った。

「たまには、会いに来て下さい。それだけで、構いません」



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