第61話 女神の捜索


目を開くと、見知らぬ光景が広がっていた。
物語で読んだ様な、豪奢で広い空間。
どこかの国の城の様な、そんな景色だ。

「ここが、天界……」

思わず、呟く。
四人ともが、観光者の様に辺りを見回すばかり。
そこへ、明るい声が響く。

「シュカ! ホントに来れたのねえ。で、どうやって来たの?」
「それは……あまり思い出したく無いです……」
「?」

かくんと首を傾げたマゼンタだったが、流石にそれ以上は問わなかった。
代わりに、見知らぬふたりを紹介する。

「こっちが女神の近衛隊長であるコーラル、その隣が副官のグレイ」
「コーラル・ヴォルトだ。宜しく頼む」
「グレイ・スコールと申します。ようこそ、天界へ」

共に挨拶を述べ、握手を交わす。
そうした所で、マゼンタが口火を切った。

「で、単刀直入に聞くけど、女神が行方不明って話は、本当なの?」
「情けない話ではあるが……本当だ。執務室を離れて以降、お姿が見えなくなってしまったのだ。
一体何が起こっているのやら、私にもさっぱり分からない」

渋い顔をして、コーラルが言う。
手掛かりを探す様に、アクアが口を開いた。

「執務室に戻っている、という事は?」
「何度か覗いたが、お戻りになられた様子は無かった」
「居なくなっちゃった理由は分からないけど、最後に居たのを確認したのは執務室なんだよね。
手掛かりとか、残って無いかな? 試しに探してみたら、何か見付かるかも」

白羽の提案に、グレイが頷く。

「それも、一理あるかも知れませんね……。ご案内します」

グレイの案内で、一行は執務室へと移動する事になった。
同じ様な風景の中進んだ先、一際豪奢な造りの扉の前で、足を止める。
そうして開かれた扉の向こうには、人の気配。
女神が戻ったのかという期待が浮かんだのも束の間、人の影が動いた。
そこに居たのは――――。



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