第56話 二度目の闘い 取り決められた日。 再びあの洋館を舞台に、二度目の闘いが始まろうとしていた。 女神候補者四名が、同じ土俵に立つのはこれが初めての事だ。 そして契約者達の方にも、初めての事があった。 今まで謎のままであった、シルヴァーの契約者の姿だ。 彼女は朱華達の輪から距離を取った位置で、様子を静観している様だ。 「えっと、確か黒花ちゃん……だったよね?」 うろ覚えに耳にした彼女の名前を反芻して、朱華は尋ねる。 しかし、少女はこちらを見ようともせず口を開く。 「他の天使の契約者は敵も同然。貴方達と慣れ合うつもりなんて、これぽっちも無いから」 「えーっと……うん、どうしよう……」 そのスタンスに、朱華は戸惑う事しか出来なかった。 一方黒花は表面上では冷静を取り繕っていたが、胸の内は激しい動揺で揺さぶられていた。 『なんであたしが、こんな所に来なきゃならないのよ……!』 そう、心の中で叫んでいた。 * 地上でそんな遣り取りがあった頃、女神候補の天使達は闘いに身を投じていた。 力の差がハッキリと見て取れる程だった前回に比べ、今はほぼ対等とも取れる遣り取りだ。 放った攻撃は、身軽な動作でひらりとかわされる。 シルヴァーは片眉を上げた。 「……何があったかは知らんが、少しは力の使い方を理解したと言う事か」 「あたし達だって、簡単にやられるつもりはないって事よ。 ま、言ってみれば気の持ち様よね」 不敵とも言える笑みと共に、マゼンタが答える。 シルヴァーは彼女の背後に控える様にしているシルクに視線を向けた。 その視線に気付いたシルクが、びくりと肩を震わせる。 「どうやら、サポートが付いただけの問題でもなさそうだな」 「あうっ、あの、その…………ごめんなさい」 ぽつりと漏らした呟きに、シルクが過剰に反応する。 反射的に零れた謝罪の言葉に、アクアが呆れた顔で息を吐いた。 「貴方が謝る必要は無いでしょう?」 「あのっ、でもっ…………ごめんなさい……」 ハッとしたシルクが弁明しようとしたが、結局出て来たのは再び謝罪の言葉だった。 アクアの溜息が、一層深くなる。 「……もういいわ」 それだけ何とか絞り出して、アクアはそれ以上の言葉を制した。 場の空気が緩んだ所に、マゼンタは疑問を放り投げた。 「あんた、どうしてそこまで女神にこだわるのよ。 あんた程の力があれば、女神じゃ無くても充分に優遇されてやっていける筈だと思うけど?」 以前にも投げかけた、問い。 あの時は、それに明確な答えが返る事は無かった。 今度も、彼女の本音を知る事は出来ないかも知れない。 けれど。 訊かなければならない様な気が、していた。 「言った筈だ。私には、女神の椅子が必要なのだと。女神以外では、意味が無い」 「あんた――――」 静かに、シルヴァーは呟く。 マゼンタが口を開きかけたその時、突然の訪問者の声が響き渡った。 |