第34話 穏やかな時


伝言を頼んだ蒼斗とアクアの両名と別れ、朱華達一行は海に遊びに来ていた。
天使ふたりにとっては、初めての海。
マゼンタは面白い物を見る様に目を輝かせている。
一方シルクは初めて見る海に若干の恐怖を抱いているようだ。

「ふぅん。海っていうのも悪くないわね」

にやりと笑って、マゼンタは海に向かって飛び込んでいく。
突然の行動に、朱華が慌てた。

「ちょ、気を付けてくださいよー!?」
「あたしを誰だと思ってんのよ!」
「どこから来るんですかその自信は……っ!!」
「賑やかだねえ、ほんと」

ばたばたと駆け出していくふたりを見て、白羽は笑う。
そうして足元にしがみつくシルクを振り返った。

「シルクも行く?」
「…………ううん、ここにいる……」

シルクはぶんぶんと首を振った。
白羽は笑って、砂浜に持参してきたシートを敷く。

「じゃ、私達は此処でのんびり過ごそうか」

こくりとうなずいて、シルクはシートの上に座った。
大騒ぎしているマゼンタと慌てる朱華の様子を遠目に眺めながら、白羽は思う。
いつかはこの平穏が崩れる時が来るのだろうか。
そんな不安に襲われる。
不意に、砂を踏みしめる音が耳に届いた。

「……貴方達、こんな所で随分と暇なのね」

呆れた様な声音に、白羽は振り返った。
そこに居たのは――――アクア。

「シルクに話があるの。借りても良いかしら?」

静かに問われた声に、白羽はうなずく事しか出来なかった。



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